牛肉の輸入急増


 今日の日本農業新聞の1面トップ記事は「TPP参加国からの牛肉の輸入量(1月1日~10日分、実質5日)は、前年1月の半月分に相当していて、輸入が急増している。2月からはEUとのEPAが発効するので輸入攻勢がさらに強まるのでは」という内容でした。
 夕方のニュースでは、「大手スーパーが牛肉の価格を引き下げている」ことが報道されていました。値下げ幅は約2割で、「安くなるのはありがたい」との消費者のインタビューもありました。

 TPPの発効で関税が下がっても、今の段階で、「小売価格の約2割低下」にはならないと思います。
 多分、大手スーパーが、「多少利益を削っても価格を安くすることで、将来的にはスーパーの経営にプラスになる」と判断したのだと思います。
 消費者にとって価格が安いことは、「稼いだ大切なお金の価値を相対的に高めること」になるので、嬉しいと受け止められると思います。

 しかし、プラス面だけではないと思います。
 例えば、「将来、肥育牛農家を継ごうか考えている方」はどう考えるでしょうか。
 関税が下がった以上に価格を下げられれば、「自分ががんばっても経営は成り立たなくなる」と大いに落胆するのではないでしょうか。
 もちろん、「スーパーが、牛肉の手数料を大幅に削り、国産牛肉を今以上の価格で買い支える」ということをすれば、肥育牛農家経営の状況は好転するかもしれませんが、現実には難しいと思います。
 牛肉に限らず、豚肉も、鶏肉も関税が引き下げられ、畜産業に大きな悪影響があります。
 もちろん、他の農林水産物も例外ではありません。

 安くなって歓迎の声がある一方で、農林水産業の経営は厳しくなり、「いざという時は自分が農林水産業を継ごう」と考えている後継者候補を大いにくじけさせることになると思います。

 今回の主題は「プラス面もマイナス面も考えていただきたい。例えば後継者候補が減ってしまえば、マイナス面は取り返しが付かない」ということであり、「牛肉は値下げすべきでない」とか「スーパーは損をしても国際農産物を今以上の価格で買うべきだ」ということではありません。
 農業現場でも小売り現場でも、特定の分野に過度な負担を求めても、それは望ましいことではないと考えています。

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